私もそう…


どんどん好きになっていく反面、緋色のオモチャだと自覚していく自分

その迷路に迷い込んで逃げ出すことが出来なかった

好きだから不安になり、不安だから自分の気持ちを伝えることも、相手の気持ちを聞くことも出来ない

ジレンマだ


「…だけど好きだから離れられない
そんな時妊娠した。大好きな人の子供…でも子供は取られる運命」

緋色はものすごく真剣な顔で私を見下ろした

「好きな人は手に入らない既婚者、やっと出来た子供、でも…跡継ぎとして取られる
それなら、どうすると思う?」

ピンときた表情を、緋色は作る

「…逃げる」

私は黙って頷いた

「確かに、辛いときに優しい人が傍に居たら、流されそうになるかもしれない。いや、流されたのかも…
でも相手のために身を引けるほどの心は、半端なものじゃないよ!」

私だって、付き合っていた訳じゃないけど緋色をどこかで期待していた

前みたいに元に戻ってくれるって

だから、山谷君は緋色を越えられなかったと思う

やっぱり私の中で良くも悪くも、緋色が一番だったから