『1人か?』

「そうですけど…」


正直、新田先生との距離の取り方がいまいち掴めない。

私が見かける新田先生はいつも女子生徒に囲まれていて、にこにこと笑っている。

だけどその状況を実際にどう思っているのかは、眼鏡に隠れて読み取ることができない。



『一緒に食うか。』

「え?」

『いや、1人なんだったらたまにはどうかと思って。』


やっぱり新田先生の考えていることは謎で、難しい。

気遣って言ってくれているのだと分かっていても、気が進まない。


初めてちゃんと話した日にとってしまった態度が引っかかっていたのもある。

私のことを竹石先生から聞いたと言われて、なんでそんなことと思ったのをそのまま態度に表してしまった。

それ以来なんとなく気まずくて、近寄りがたくなっている。



「すみません、今日は…」

『そうか。引き留めて悪かったな。』

「いえ。失礼します。」


一礼してからその場を離れると、すぐに背中に新田先生を呼ぶ明るい声が聞こえた。

私なんかと食べなくたって、新田先生ならいくらでも声がかかる。