「おーい、静かにしろ。」


今年から受け持つ2年2組の教室に入っても、教室内のざわめきは収まらなかった。

まだまだ教師として経験の浅い25歳だ。

ちょっと腹が立つけど、なめられているのかもしれない。



「静かにって言ってるだろ。」


名簿でポンと軽く教卓を叩くと、ようやく教室内は静かになった。

去年も数学で教えているからだいたいの生徒の顔は見たことがある。



『新田先生が担任とか超ラッキー。』

『は~イケメンが担任だと女子の目がこっちにこねぇわ。』

「うん、1回黙ろうか。お前ら今日から2年なんだからちょっとは大人になれよ。」

『こわー。』


恐らく1年の頃からクラスの中心だったのだろう男女の顔をもう1度確認する。

関わりたくないというより目を付けられたくないと密かに俯く生徒の顔も。


その中で、そっと須崎の表情を窺った。

俺から見て右から2列目、1番後ろの席。

誰かを見るでも俯くでもなく、ただ前を見ていた視線と視線が交わった。