***


やっぱり、やめときゃ良かった。
……同窓会開始まであと30分。

会場は馴染みのある居酒屋。


タクシーで向かおうかとも思ったけれど、会場に早く着くのも気が進まず。結局、居酒屋までの道をゆっくり、ゆっくり歩いている。


どうしよう、このまま行かない?


いやでも、そんなことしたら里奈が黙ってない。それにもう本当に拓也に未練なんてないのに、今日行かなければ、みんなの中で"心音はまだ拓也を引きずってる"ってことにもなりかねない。


……それだけは避けたい。


うだうだ悩むのは私らしくないけど、考えれば考えるほどため息しか出ない。

いっそ、拓也が気をきかせて同窓会に来なければいいのになんて思うのは性格悪すぎかな。


「はぁ〜……」

「あれ?しんおんちゃん!?」


───!!


背中から聞こえた声に驚いて、思わず足を止め振り向く。


振り向かなくても分かるのは、私を"しんおんちゃん"と呼ぶ人がこの世に1人だけだから。