「お、尾崎先生?……どうしました?」


向かいの席で、同じく仕事中だった5年生の担任鈴木先生が、恐る恐るといった様子で私を見る。


「避難訓練のことで、消防署に電話したんですけど……めっちゃ嫌な人で!!」

「……あぁ、消防ね〜。自分たちは”地域の安全を守ってる”みたいな顔して、夜な夜な合コン三昧らしいし。その上、業務中の態度まで悪いとか信用問題ね」

「夜な夜な合コン三昧!?……一体、どっちがお気楽だっつーの!」

「ま、気にしないことよ。いちいち相手にしてたらキリがないし。子どもたちのこと考えてた方がよっぽど有意義」


鈴木先生の言葉に、確かに……と、気を引き締め直す。腹が立つのは変わりないけど、避難訓練が終わるまではきっと、あの組織を避けては通れない。


無心で戦え、私。


「それで?いつ打ち合わせするの?」



そう言いながら、手元の資料から顔を上げた鈴木先生と目が合う。その瞬間、ハッ……!と背筋が凍るような感覚に見舞われた。


「……あぁああ!!!ムカついて、そのまま電話切っちゃったので……打ち合わせ日すらアポ取れませんでした」



……これだから、お気楽だなんて言われるんだ。
あぁ、今猛烈に、穴があったら入りたい。