決してそらさないように、真っ直ぐ菅野さんを見つめるけれど、すぐにフイッと目をそらされて、私の体からフッと力が抜けるのを感じた。
「……お前といると、不思議な感じがする」
「え……?」
「オレンジ。……俺の中のオレンジは、あの夜に見た燃え上がる炎の色だったはずなのに」
そう言って、───スッと私に一歩近づいた菅野さんが、
「……っ、」
親指の腹で私の頬を優しく撫でる。
まるで、大事なものでも触るみたいに、優しく。
「俺の中のオレンジをお前で上塗りしようとする自分がいる……」
「す、……すがのさん」
「あの日見たオレンジを俺が忘れるなんて、きっと一生許されないのにな」
フッと目を細めて、私の頬から離れていくその手を、私の手は”離れないで”とばかりに追いかける。
「……無理に覚えている必要はないと思います。忘れるんじゃなく、記憶は薄れるんです。……さとこ先生はきっと、今も菅野さんをどこか遠いところから優しく見守っていて、……っ、」
「……なんて顔してんだよ」
涙で視界がぼやける。
自分がこんなにも涙脆い人間だったなんて、思ってもみなかった。


