「十環、このキーホルダー、
 絶対に触るなよ」


「いいじゃん、ちょっとくらい見せてよ」


「だめ! 
 俺と六花以外の指紋は
 絶対につけたくないし!!」


「指紋って、
 そんな目に見えないものに価値なんてある?

 それにさ、他にも、
 どっとついていると思うよ。

 お客さんとかの指紋がべったりと」


「おい!十環!
 俺の宝物の価値、下げんな!」


「おれは、事実を言っただけじゃん」


 十環とのこういう冗談の言い合いが
 結構好きだ。


 俺たちは、
 そんなどうでもいいことを言いあって、
 バイト先を後にした。