学校にもいない。


 よく行くスーパーにもいない。
 図書館にも、公園にもいなかった。


 六花の奴、どこに行ってんだよ! 


 あっ!!


 なんでこの場所を、
 一番に思いつかなかったんだ、俺は。


 何年、
 六花の兄をやっていると思ってんだ!


 自分で自分にムカつき、
 ある場所に走った。


 その場所は……

 母さんのお墓。



 やっぱり……ここにいた……


 母さんの墓の前で、
 小さくしゃがみ込む影を見つけて、
 俺はいつもの悪魔モードで
 声を掛けようとしたけど……


 この豪快な泣き声……

 六花じゃない…… 

 親父だし!!



 親父は涙をボロボロ流しながら、
 お墓に抱きついた。


「雪ちゃん~ 会いたいよ~
 会いたくて会いたくて、しかたがないよ~」


 母さんが亡くなって、もうすぐ9年。


 俺たちの前では、
 『アホ』って言葉がぴったりな、
 おちゃらけおじさんだけど、
 今まで涙を流した親父を、
 1度も見たことがない。


 母さんがいなくなった悲しみを、
 親父もまだぬぐい去れてなかったんだな。


 なんか、
 親父に声を掛けるのが申し訳ない感じがして、
 声を掛けるのをやめた。


 絶対、母さんの所かと思ったのに。
 六花の奴、どこにいんだよ!


 とりあえず家に帰ってみたが、
 相変わらず六花の気配なし。

 
 2階にあがり、
 親父の部屋にいるインコの小雪に
 話しかけた。


「小雪さ、
 六花がどこに行ったか、知らないよな?」


「リッカ、リッカ」


 小雪は、簡単な言葉はしゃべったりする。


 でも、俺の言っている事まで、
 理解はしてないよな。

 そう思っていると……


「ステンド、ステンド」


 小雪の発した言葉にハッとして、
 俺は親父の部屋を飛び出した。