毎回このパターンだよ!


 でも桃ちゃんが叫びたくなる気もち、
 わかるよ。


 『好きな人、いますか?』なんて、 
 『あなたのことが好きです』って
 告白しちゃったようなものだよね。


 なんでそんなこと、
 書いちゃったんだろう……


 午前中の授業中も、必死に考えていたから、
 頭のねじが
 1本抜け落ちちゃっていたのかな……


 七星くんが見たら……なんて思うかな……


 桃ちゃんは、
 マリア様みたいな慈悲深い微笑で、
 私の頭をなでてくれた。


「頑張ったね、六花」


「桃ちゃ~ん」


「七星くん、
 六花にどんなお弁当を作ったか楽しみすぎる。
 早く、蓋開けて」


 楽しみなのは、私もだよ。


 でも……楽しみすぎて……

 逆に怖くて蓋が開けられない……


「ムリだよ!桃ちゃん。

 どうしてかわからないけど、
 蓋を開ける勇気が出ないよ……」


「もう、じらしすぎ! 六花は!
 貸して! 私が開けてあげるから!」


 桃ちゃんは私の返事も聞かずに、
 お弁当の蓋を開けた。


 か……かわいい……


 
 全く予想していなかったお弁当に、
 声が出ない。


 隣にいる、
 神経が図太そうな桃ちゃんまで
 固まっている。


 そのお弁当は
 『お誕生日仕様のキャラ弁』だった。


 ご飯が3段ケーキの形をしていて、
 波々にカットされたハムが、
 ケーキに飾られていた。


 これはチーズかな?

 細く切ったチーズの先端に
 ケチャップがついていて、
 ろうそくまで再現されていた。


 ハムや卵で作った花や、
 赤いウインナーで、
 8本足のたこさんまでいる。


 しかもケーキの一番下の段には、
 海苔をカットして
 『HAPPYBIRTHDAY』が
 作られていた。


「七星くん、なかなかやるね。
 私なんかより、女子力高いよ」


 桃ちゃんも、素直に感心している。


 このお弁当を作るのに、
 ものすごく時間がかかったと思う。


 毎日お弁当を作っている私でも、
 朝の時間にこんなのを作ったら、
 学校に間に合わなくなっちゃうと思うし。


「六花! きっといい返事もらえるよ!」


「え?」


「だって、好きでもない子に、
 こんな手の込んだお弁当作らないでしょ?

 七星くん、絶対に六花のことが好きだって」


 桃ちゃんの自信満々な声が、
 嬉しくて、少しくすぐったい。


 でも……


 こんなにブスで、地味で、
 桃ちゃんにしか心を開かないような暗い私を、
 あんなキラキラした七星くんが、
 選ぶはずないよ……


「私のことなんて……

 好きになってくれる人……いないから……」


「もう、またそんなこと言ってる。
 一颯先輩に、洗脳されすぎだからね。

 そんなに自分に自信がないなら、
 毎日メガネ外して、髪下ろして学校に来なよ。

 クラスのみんながびっくりするくらい、
 六花はかわいいんだから」


「桃ちゃん、褒めすぎだよ。

 それに……そんな格好で外を出歩いたら……
 斧を持った、
 赤城家の先祖に襲われちゃうもん」


「またそんな、意味不明なこと言って。

 とりあえずお昼食べよう! 
 せっかく七星くんが
 作ってくれたんだから。ね」


 私のために、
 七星くんが作ってくれたお弁当。


 もったいなさ過ぎて……
 ずっと食べずにとっておきたい。


「もう、食べないなら、
 私がもらっちゃおう!」


「ちょ……ちょっと……桃ちゃん!」


 私が一番楽しみにしていた、
 エノキの肉巻きを、
 桃ちゃんがパクリと食べてしまった。


「これ以上取られたくなかったら、
 早く食べないとね」


「食べるもん! 
 だからもう、
 桃ちゃんは食べちゃダメだからね!」


 私はそう言って、
 エノキの肉巻きをパクリと食べた。