親父のスマホに、
 メッセージを送った。 


 『みんな、帰ったぞ』


 それからたった10分で、
 子煩悩な親父は帰ってきた。


 さすが! 

 親父の六花愛! 

 海よりも深い。



 そんなに深く潜られちゃうと、
 深海生物もびっくりだよな。


「りっちゃ~ん。 

 16歳になったりっちゃんも、
 本当にかわいい」


 また、そこからですか……



 いつものように、帰って来て早々、
 六花に抱きつく親父。


「お父さん、タコありがとう」


 オイ! オイ! 


 タコを丸ごと1匹買ってきた親父に、
 なんで感謝するんだよ!と思うが、
 あのタコのお陰というか、せいだよな。

 
 六花と七星の
 距離が縮まったのって。


 本当に余計なことしやがって! 

 親父の奴!


 そう思えてきたら、
 イライラが抑えられなくなってきた。


 自分のせいで俺がイラついているなんて、
 コメ粒ほども思っていない親父。


 ニコニコしながら、
 六花に何かを渡そうとしている。


「りっちゃん、これ、お誕生日プレゼント」


「何かな? お父さん、開けてもいい?」


「もちろんだよ。

 去年は手編みの靴下をあげて
 失敗しちゃっただろ?  

 洗濯するたびに、毛糸がほつれて、
 最後にはただの真っ赤な毛糸になっちゃってさ

 だから今年は、
 絶対にりっちゃんが喜ぶものを
 用意したから!」



 自信満々な親父だけど……


 タコを丸ごと買ってくる奴だぞ。


 どこから来るんだ、その自信は?


 俺の心配をよそに、
 六花は満面の笑顔で袋から取り出した。


「え?」


 六花の戸惑いの表情。


 親父の奴、六花にこんな顔させるなんて、
 何をあげたんだよ。


 そう思って、六花の手元を確認。


 『マコちゃん…… 人形……』


 なんてチョイスだ!

 
 着せ替えができる人形だけど……
 六花はもう16歳。 


 おままごとなんてする年齢を
 とっくに超えている。


 しかも……3体も……