白雪姫に極甘な毒リンゴを


 その時


 ピピピピ!! ピピピピ!!


 タコを取り出しなさいよ!と、
 キッチンタイマーが教えてくれた。


 取り出して、
 まな板にのせたのはいいけど……


 このタコさんを……
 切らなきゃダメだよね……


 この前、たこ焼きを作った時は、
 タコの足だけだったから、
 なんの躊躇もなくカットできたのに。


 頭がついているだけの違いなのに、
 怖くて……切れないよう……


 どうしよう……


 桃ちゃんに助けてもらおうかな……


 でも、目をつぶれば、切れるかも!!!


 瞳を閉じて、
 包丁を持った震える手で、
 タコを切ろうとした時


「ちょっと待って! りっちゃん!」


 いきなり耳に入った声に
 ビックリして目を開けると、
 目の前に心配そうな顔の七星くんが。


「もしかして、りっちゃん、
 目をつぶって、タコを切ろうとしていた?」


「う……うん」


「タコ、怖いの?」


「う……うん。 顔が……」


「もう、いつも無茶するんだから。 
 りっちゃんは」


 そう言って見せた
 七星くんの穏やかな笑顔。


 真っ白な綿で優しくくるんでくれたみたいに
 私の心が温かくなった。


 この、
 陽だまりのようなあったかい笑顔……


 大好き……



「りっちゃん、ちょっと待っていて」


 七星くんはそう言うと、
 自分のかばんから、
 何かを取り出し戻ってきた。


「タコが怖いなら、言ってくれればいいのに。
 あとは俺に任せて」


「え? でも……」


「いいから。 ね!」


 私の目を見つめ、
 優しく微笑んでくれた七星くん。


 どうしよう……


 そんな陽だまりみたいに
 温かい瞳を向けられたら、
 心臓が猛スピードで動いちゃうのに……


 しかも…… その格好は…… 

 
 予想外です……