「お誕生日会か……
お兄ちゃんに、なんて言おう……」
学校から帰って、
卵をかき混ぜながら考える。
昨日、七星くんに
きつい態度をとっていたお兄ちゃん。
それを目の当たりにしたせいか、
絶対に許してくれない気がする。
男の子を、この家に上がらせることを。
お兄ちゃんが好きな
オムライスのデミグラスソース掛けを作って、
喜んで食べているときに、
サラッと話してみようかな。
そんなことを企みながら、
お兄ちゃんが嫌いな野菜は一切入っていない
スペシャルディナーをテーブルに用意した。
我が家の夕飯は、
みんな一人で食べることが多い。
お兄ちゃんと家で二人きりの時は、
私は絶対にお兄ちゃんと一緒に
ご飯なんて食べない。
『この味付け、まずすぎ』とか、
『野菜入れんな』とか言われるし。
私のことを『ブス』だの『バカ』だの、
ののしってくるから。
お兄ちゃんと同じ場所にはいたくない。
だからいつもは、
お兄ちゃんがご飯を食べ終わっって、
部屋に戻ったのを見計らって、
私も夕飯を食べるようにしている。
今夜も、
一人で夕飯を食べているお兄ちゃん。
ダイニングテーブルの上が吹き抜けで、
私の部屋の小窓から、そっと下を覗くと
お兄ちゃんが笑顔で
オムライスをほおばっているのが見えた。
これはチャンスかも!
お兄ちゃんにあのことを言うのは、
今しかないかも!
『男の子を、家に呼んでもいい?』って。
私は大事なお守りを握りしめ
お兄ちゃんのいるダイニングに向かった。



