白雪姫に極甘な毒リンゴを


 自分の席に戻ろうとしていた七星くんが、
 私たちの方を向き、小さな声で言った。


「りっちゃんの誕生日会、
 誘うなら、紫音くんじゃなく俺を誘って」


 えぇぇぇぇぇ!!



 何、この展開?



 隣にいる桃ちゃんを見ると、
 ニヤリと口角を上げて微笑んでいる。


 桃ちゃん、これが狙いだった?


 策略家の桃ちゃん…… 恐るべし……


「あ……でも……
 お兄ちゃんに聞いてみないと……
 家でやっていいか……」


「お兄さんにダメって言われたら、
 俺の家でもいいよ。
 りっちゃんの誕生日会」


 私の机に両手をついた七星くん。


 まっすぐな瞳が、
 目の前にいる私を見つめている。


 ファンファンファンファン!!


 危険!危険!


 このまま七星くんを見つめたら、
 好きって思いが止まらなくなっちゃう!


 私は真っ赤になった顔を見られたくなくて、
 急いでうつむいた。


「じゃあ決まりね!
 六花の誕生日は、たこ焼きパーティー」


 桃ちゃんがそう言った声を聞きつけて


「え? 誕生日パーティー?
 私も行きたいな」


 急に、
 七星くんに寄り添うように
 ピタッとくっついたのは、
 クルミちゃんだった。

 
「六花ちゃん、ダメかな?」


 甘い甘い声。


 真ん丸な瞳での上目遣い。

 
 そんな、
 男の子が守ってあげたくなるような
 微笑を向けられたら、
 来ちゃダメなんて言えないよ。


 本当は……

 来てほしく……ないけど……


「いいよ」


「やった~!! 
 六花ちゃん、ありがとう!!

 七星、今度一緒に
 プレゼント買いに行こうよ! 
 六花ちゃんの!」


「……ああ」


 敏腕策略家の桃ちゃんも、
 クルミちゃんが来ることは
 想定外だったみたい。


 桃ちゃん、クルミちゃんを睨みすぎ! 


 そんな睨んだら、
 気づかれちゃいますよ!


 お誕生会に
 七星くんが来てくれるのは嬉しい……

 
 でも……


 自分の誕生日に、
 七星くんとクルミちゃんの
 イチャイチャぶりを見せつけられたら、
 結構へこみそうな気がする……


 七星くんとクルミちゃんが
 自分たちの席に戻ったのを確認して、
 桃ちゃんは私に話しかけてきた。


「六花ごめんね。でも安心して!

 六花にとって、
 最高の誕生日にしてあげるからね」


 私のことを
 心から思ってくれているのが伝わる
 桃ちゃんの言葉。


 私の瞳が、ジーンと熱くなった。