「どうしよう……どうしよう……」


 学校が終わって、
 私は家の近くの自動販売機の前で
 悩みに悩んでいた。


 七星くんに、
 本を運んでもらったお礼をしたいけど……
 どのジュースが好きか、
 ぜんぜんわからないよ……


 お茶やコーヒーじゃ……ないよね……


 バナナミルク?


 う~ん。 

 いらないって言われても、
 私は飲めないからな。バナナ嫌いだし。


 苺ミルク?


 いちごって、嫌いな人いないよね?


 うちのお父さんも、
 よく苺ミルク飲んでるし。


 もう、これにしちゃえ!


 私は覚悟を決め、
 苺ミルクを買うことにした。

 
 お礼は何個が良いかな? 

 
 1個じゃ寂しいよね……
 

 2個? 3個? 4個?  


 何個買っていいかわからず、
 とりあえずお金を入れてボタンを押した。


 気づくと、7個も買っているし……

 
 さすがに7個は、あげすぎだよね?
 そう思っていた時、


「赤城さんって、苺ミルク好きなんだね」


 え?? 


 な……七星くん?


 学校帰りの七星くんに声を掛けられ、
 緊張して挙動不審に……


 渡さなきゃ! 


 本を運んでくれたお礼って言って
 渡さなきゃ!


 そう思うのに、
 緊張マックスで声が出てきてくれない。


「俺も苺ミルクが好きだけど、
 赤城さんには負けるかな。
 じゃ、また明日ね」


 七星くんは、
 さわやかな笑顔で行ってしまった。


 お礼……渡せなかった……


 
 そしてそれ以降は、
 七星くんとお話しするチャンスがないまま、
 小学校を卒業して、
 中学校を卒業して、高校生になった。


 そしてやっと、高校で同じクラスになった。