夕飯の後、食器を洗い終えた六花。


 冷蔵庫に首を突っ込んだまま、
 固まっている。


「おい、冷蔵庫開けっ放しで、
 何やってんだよ」


 俺の言葉に、
 すぐさま冷蔵庫を閉めた六花。


 まあ、聞かなくてもわかるけどな。


 どうせ、
 七星から苺ミルクをもらったのが嬉しくて、
 眺めていたんだろうけど……


 七星のことを考えているとき六花は、
 優しく微笑んでいるからわかりやすい。


 母親が子供を見つめるような、
 温かい表情をする六花の横顔は、
 見とれてしまうほど綺麗。


 でもそれが、
 俺に向けられたものじゃないことが
 ものすごくムカつく。


「たこ焼きのお礼が苺ミルクって、
 どうなのかねぇ。
 子供か?ってかんじじゃね?」


 俺の言葉に、
 すぐさま目をつり上げた六花。


「私、苺ミルク好きだもん。
 お兄ちゃん、絶対に飲まないでよ!」


「は?飲むわけねえし。
 そんな甘ったるいもの」


「お兄ちゃん、甘いもの嫌いだもんね。
 私が好きな物を、
 お兄ちゃんが嫌いで良かった」


 六花はそう言い捨てて、
 お風呂に入りに行ってしまった。


『私が好きな物を、
 お兄ちゃんが嫌いで良かった』かぁ……

 
 なんて残酷なことを言うんだあいつは。


 あいつは俺のことを、
 心臓が腐っても生きていける悪魔だって
 思っているみたいだけど、
 俺だって、傷つくんだからな…… 


 特にお前のことで……


 六花がいなくなったキッチンで、
 俺は冷蔵庫に抱きついた。


 「つめてえな」


 冷蔵庫のドアの冷たさが、
 六花の俺への思いに感じて、
 胸が苦しくなる。


 麦茶でも飲むか。


 そう思い冷蔵庫を開けた時、
 綺麗に1列に並んだ、
 パックの苺ミルクが目に入った。


 そういえば、気になっていたんだった。


 六花が、『苺ミルクを4個もいいの?』と
 聞いた後に、
 七星が言った言葉が。


 『4個じゃなきゃ、意味ないからさ』


 なんで4個なんだよ?


 俺は苺ミルクのパックを手に取り、
 ぐるりと見回した。


 ん? なんだこれ? 


 『で?』