「十環さんが桃ちゃんを、
 好きになってくれる可能性って、あるかな?」


 ん? 


 どういうことだ?

  
 頭の中が100パーセント、
 可愛すぎる六花で埋め尽くされていたからか、
 すぐには理解ができなかった。


「今日桃ちゃんに言われたの。

 十環先輩が……好きだって」


 は? 


 あの俺にケンカをふっけてきた桃ちゃんが、
 十環に惚れているのか?


 あらららら……


 寄りにもよって、十環を選ぶとは……


「十環の奴、
 まだ結愛さんのことが忘れられないからな」


「そうだよね……

 私ね、桃ちゃんにそのことを言えなかったの。
 そのうえ、無責任なこと言っちゃったんだよ」


 六花が悲しそうな顔でうつむいた。


「なんて言っちゃったわけ?」


「………桃ちゃんと十環先輩、

 お似合いだと思うって」


 今にも泣きそうな顔で、
 じっと床を見つめている六花。


 俺、お前にそんな顔
 していて欲しくないんだけどな。


 俺が辛くなるから。


 六花が傷ついている姿を見るのは。


 六花の心を少しでも軽くしてあげたい。
 俺はそう思った。


「六花の言う通りかもな」


「え?」


「だから、
 十環と桃ちゃんはお似合いだってこと」


「で……でも……

 十環さんはずっと、
 結愛さんのことが忘れられないんだよ。

 まだ、大好きだからでしょ?」


「その通りだけど、俺、思うんだ。

 桃ちゃんだったら溶かせるかもな。

 分厚い氷に覆われた、十環の心の闇をさ」


「じゃあ私、
 桃ちゃんの恋を応援してもいいかな?」


「良いんじゃね?

 それより六花さ、
  桃ちゃんの心配より自分の心配をしたら?」


「ん?」


「だから、そんな無防備な表情で、
 俺を見つめんなって」