「気づいたんだろ?

 お前が大事に持っていたお守りは、
 七星じゃなくて、俺が作ったものだって」


「……うん。

 でも、なんで言ってくれなかったの?」


「下手だったから」


「え?」


「お前が、
 母さんが亡くなって悲しんでいるから、
 親父に作り方を教わって、作ってみたんだ。

 だけどさ、
 俺は小3で裁縫が初めてでさ、
 うまく作れなくて。

 こんな下手なお守り、
 直接お前に渡す勇気もなくてさ、
 封筒の中に入れて、
 ランドセルの中に忍ばせた。

 そしたらさ、『七星くんからもらった』
 って勘違いしてて。

 でも、すっげー嬉しそうだったから、
 言えなかった。俺が作ったって

 でも、結構辛かったけどな。

 俺が作ったお守りを抱きしめながら、
 七星を思ってる六花を見てるのがさ」


 そうだったんだ。


 私、知らないところで、
 お兄ちゃんを苦しめていたんだ。


「ごめんね……お兄ちゃん」


「別に、お前のせいじゃねえし」


「お兄ちゃんは、
 私のことが大嫌いだって思っていた。

 だから、誕生日プレゼントなんて
 もらえるはずないって。

 それなのに、こんな手の込んだプレゼントを、
 毎年用意してくれていったんだね。

 すっごく嬉しい!」


「今日まで
 六花に渡さなくて良かったかも」


「え?」


「今、俺に向けてくれる六花の笑顔が、
 最高にかわいいから」


 ひゃ?


 笑顔が最高にかわいい??


 そ……そ……そんな甘い言葉


 いきなり言わないでよ。


 恥ずかしすぎて……

 この部屋から飛び出しちゃうからね。


 お兄ちゃんにドキドキさせられっぱなしで、
 お母さんが亡くなった時のことなど、
 今はすっかり忘れていた。