一歩一歩、お兄ちゃんの部屋に近づくにつれ、
私の頭の中に、
お母さんが亡くなった日の映像が、
鮮明になっていく。
「お……お兄ちゃん……
やっぱり私……
この部屋には入れない……」
足がガクガクと震えだした。
そんな私を優しい瞳で見つめたお兄ちゃんが、
いきなり私をお姫様抱っこ。
「え?
ちょ……ちょっと……」
「六花がムリって言っても、
今から俺の部屋に連れていくから」
お兄ちゃん!!
顔が、近すぎ!!
そんなモデル並みの整った顔で、
まっすぐに見つめられたら、
拒否できないよ。
私はしょうがなくコクリとうなずくと、
お姫様抱っこをされたまま、
目をぎゅっと閉じた。
ドアを開ける音がして、
お兄ちゃんの部屋に入ったのがわかった。
「六花、目を開けてみて」
「そ……それは……ムリだよ。
目なんて開けられないよ」
「六花が目を開けないなら、
キスするからな」
え? え? え?
キ……キス?????
その言葉にビックリして、
パッと目を開けた瞬間に、
カラフルなものが瞳に飛び込んできた。
お兄ちゃんの部屋が……
カラフルなパーティー飾りで彩られている。
私はお兄ちゃんの腕の中から
するりと抜け出すと、
部屋中をぐるりと見まわした。



