「昨日お前に言ったこと……
あれ……
本気じゃないから」
「え?」
「お前より、茜が好きだって言っただろ。
あれ……
嘘だから……」
それって、どういうこと?
「俺さ、2か月前にこの家を出てから、
六花のことを忘れよう、
忘れようって必死だった。
早くお前への思いを捨て去って、
兄としてお前のもとに帰らなきゃって。
でも、全然忘れられないし、
六花に会いたいって思いは
どんどん募っていくし、結構つらくてさ。
その辛さを紛らわしてくれたのが茜だった。
茜と一緒にいれば、
楽しく六花のことを忘れられるんだ。
それなのに、一人になった瞬間に
俺が思い出すのは、いつもお前のことで。
全然、俺の中からいなくなってくれなくて。
だから俺、昨日の夜に茜に
自分の思いを伝えて謝ったんだ。
別れてくれって。」
茜さんと……
別れたってこと?
「茜さんは、なんて言ったの?」
「俺もさ、怒鳴ったり泣かれたり
されるんだろうなって思った。
でも俺が自分の思いを話したら、
いつもみたいに優しい声で言ったんだ。
『一颯が他に好きな子がいるって、
わかっていたよ』って。
『弱っている人を見ていると、
ほっとけないからかな。一惹かれたのは』って
本当に、良い奴だった。茜は」
茜さん。
本当に素敵な人だな。
私はきっと、
お兄ちゃんの気持ちを一
番に考えてあげるなんて、
そんなことできそうにないな。



