お兄ちゃんと歩いて家に帰り、
その後、私はお兄ちゃんの大好物ばかりの
夕飯を用意した。
だって……
明日からお兄ちゃんは、
高校の寮に入っちゃう。
そして当分、
私が作った夕飯を一緒に食べることは
できなくなるから。
でも、お弁当はお兄ちゃんの分も作って、
届けてあげよう。
そうすれば、
お兄ちゃんに会いに行く口実が
作れちゃうから。
それくらいはいいよね?
お兄ちゃん。
お父さんも帰ってきて、
3人で夕飯を食べ終え、
お風呂にも入って、そろそろ寝る時間。
自分の部屋に入った瞬間、
心が急にざわつき始めた。
私の意志とは関係なく、
勝手に再生される9年前の記憶。
2人でお布団に入って、
頭が痛いって顔をゆがめながらも、
笑顔を作って絵本を読んでくれたお母さん。
お母さんの温かい手のひらで
頭を撫でられるのが心地よくて、
そのまま私は眠ってしまった。
目が覚めたら、
優しいお母さんの笑顔が見られるって
疑いもしないで。
それなのに、
目が覚めた時には地獄だった。
お兄ちゃんが必死で
『お母さん! お母さん!』と叫んでいて、
さっきまで私の頭を
撫でてくれていたお母さんの手のひらが、
冷たくなっていた。
ゆすっても、泣き叫んでも、
お母さんは目覚めてなんてくれなくて、
駆けつけてくれた春香おばさんに抱き着いて、
泣くことしかできなかった。
お母さんが亡くなった時、
お兄ちゃんに言われたんだった。
『母さんが死んだのは、六花のせいだって』
そう、その通り。
私が友達と遊びたくて、
お母さんを病院に行かせてあげなかったから。
頭が痛いお母さんに、
絵本を読んでってお願いしちゃったから。
「ごめんなさい……
ごめんなさい……
ごめんなさい……」
9年前のことなのに、
あの悪夢のような出来事が
鮮明に頭の中に流れ出し、
私は布団を頭からかぶって、
『ごめんなさい』を言い続けた。
「大丈夫か? りっか!!」
私の部屋に入ってきたお兄ちゃんに
布団の上から体を揺すられ、
ハッと現実に戻ってきた。



