白雪姫に極甘な毒リンゴを


 そんな風に……思ってくれていたんだね。


 ずっとお兄ちゃんに
 嫌われているって思っていたけど、
 本当は、子供の頃と変わらず、
 私のことを大事にしてくれていたんだね。


 それなのに私は……


 お兄ちゃんの優しさにも、
 悲しみにも気づかないで、
 『お兄ちゃんなんて大嫌い!』って、
 ひどい言葉を投げかけていた。


 何度も、何度も。


 でも……


 今更お兄ちゃんのことを、
 男としては見られない。


 だって、私が2歳の時だよ。
 私のお兄ちゃんになってくれたのは。


 いくら血がつながっていないとはいえ、
 『兄』と『妹』として育ってきたんだもん。


 「私……お兄ちゃんのこと、
  やっぱりお兄ちゃんとしか……思えない」


 お兄ちゃんは、
 悲しげな表情を一瞬見せたと思うと、
 それを隠すかのように穏やかに笑った。


「わかってるよ。

 六花は、七星のことが好きなんだろ?」


「え?
 七星くんのことなんて……

 もう好きじゃないよ……

 だって、七星くんの隣には
 いつもクルミちゃんがいて、
 私なんかよりもお似合いなんだから……」


「六花はただ、
 クルミに嫉妬しているだけだろ?

 それだけ七星のこと、
 好きってことなんじゃないのか?」


「そんなことは……」


 そんなことは……ないと思う……


「傷つきたくないから、
 七星のことが嫌いって
 思い込もうとしているように、
 俺には見えるけどな」


 そう……なのかな?