学校を出てからは、
家まで必死に走った。
きっと六花は、
ステンドグラスの部屋にいるはず。
そこで縮こまって、
母さんを思い泣いているに違いない。
そう思っていたのに、家に帰っても、
ステンドグラスの部屋に六花はいなかった。
家じゅうどこにもいない。
親父にも、春香おばさんにも
電話で聞いたけど、
居場所はわからなかった。
「お前にもわからないよな?」
神にもすがる思いで話しかけたのは、
インコの小雪。
「六花の居場所なんて、知らねえよな?」
俺の弱弱しい声をかき消すように、
バサバサと羽を羽ばたかせ、
高い声ではっきりと言った。
「タコヤキ! タコヤキ!」
は?
たこ焼きってなんだよ。
確かに昨日、
俺のバイト先のショッピングモールで、
俺がたこ焼きを買ってやったけど。
やっぱり、
インコに聞いてもダメに決まっているよな。
たこ焼きなんて、場所じゃないし。
食べ物だし。
ん?
たこ焼き?
いきなり頭の中に、
子供の時の記憶が、
一瞬だけフラッシュバックした。
母さんと六花と一緒に、
たこ焼きをほおばる記憶が。
思い出せ! 思い出せ!
俺は母さんとの思い出の詰まった、
ステンドグラスの部屋に入り、
一生懸命に『たこ焼き』にまつわる記憶を
呼び起こした。



