白雪姫に極甘な毒リンゴを



 お兄ちゃんは、
 顔をゆがませ、唇をギュッとかみしめた。


「親父に、頼んでおいてやるから。
 家にいてやってって。それでいいだろ?」


 そう言い残して、
 お兄ちゃんは私の前から去っていった。

 
 このままバイバイじゃだめだ!


 お兄ちゃんを捕まえて、
 自分の思いをちゃんと伝えなきゃ。


 そう思うのに、
 私の足は全く動いてくれない。


 ただただ涙だけが、
 ぽたぽたと床を濡らしている。