白雪姫に極甘な毒リンゴを


 お兄ちゃんに、
 どんな言葉を選んで
 自分の思いを伝えればいいか悩んでいたとき、
 私を突き放すかのようにお兄ちゃんが言った。


「親父が迎えに来てるぞ。

 北側入り口前の駐車場にいるから。
 早く帰れ」


 え?


 私……

 お父さんと帰るの?


 心のどこかで期待をしていた。


 暗闇に中、
 私が一人で歩いて帰ることなんて、
 お兄ちゃんは絶対にさせない。


 だから、
 お兄ちゃんが送ってくれるだろうって。


 それなのに……


 私の甘い考えの、上を行くお兄ちゃん。


 でも、どうしてもお兄ちゃんと話したい。


 だって私、
 そのために勇気を出してここに来たんだもん。


 私はお兄ちゃんの洋服の裾をつかんで、
 うつむきながら言った。


「お兄ちゃんと……

 一緒がいい……」


「…………ムリ」


「夜とか、家に一人で寂しいもん」


「……ムリ」


「小雪も、
 お兄ちゃんに会えなくて悲しんでいるよ」


「だから、無理って言ってんだろ!」




「せめて……

 明日だけでいいから……」