「嫌いとか……じゃなくて……
 ただ……」


 続きの言葉が出てこない。


 七星くんのことが好きで、
 ドキドキしちゃって話せないなんて、
 本当のことは言えないし……


「赤城さん?」


「え……と……
 嫌いじゃ……ないです……
 七星くんの……こと」


 これが精いっぱいの言葉だった。


 ただ、
 嫌いじゃないって伝えただけなのに、
 七星くんに好きって伝えたくらい
 恥ずかしくなった。


 そして私の顔は苺のように
 どんどんどんどん真っ赤になっていく。


「よかった」


 七星くんがほっとしたように微笑んだから、
 その笑顔にキュンとしてしまった。


「そうだ。
 お弁当箱、返さなきゃ。」


「あ……ありがとう
 返すのは……明日でも良かったのに……」


「それはダメ!」


「え?」


「ちゃんと、赤城さんと二人だけの時に、
 渡したかったから」


 ん?

 二人だけの時?


 七星くんはうつむいたまま、
 お弁当箱の入った紙袋を、
 私に手渡した。


 重いなと感じて袋の中を見ると、
 パックの苺ミルクが、4個入っていた。


「赤城さんって、
 苺ミルクが好きだったよね?」


「あ……うん」


 その言葉に、
 小学生の時に七星くんを
 好きになった時の自分が蘇る。


 あの時のこと……

 覚えていてくれていたんだ……