トントン 

「六花!」


 返事なしかぁ。


 あ~もう!


 こっからは悪魔モードで
 行くしかないじゃん。


「六花!! 入るからな!!」


 俺は怒鳴りながら、
 勝手に六花の部屋のドアを開けた。


 あれで隠れているつもりかよ。


 ベッドの上の掛け布団が、
 ダンゴムシみたいに盛り上がってんだけど。


「六花、
 隠れるならもっとマシなとこに隠れろよ」


「#$%……&#$%&#$……
 $%&#$%&#!」


 布団に潜りながらで、
 六花がなんて言ったのかまったくわかんねえ。

 
「あ~!! はっきりしゃべれよ!!」


 俺がそう言って、
 無理やり布団をはぎ取ると、
 涙でウルウルの瞳で、六花が俺を見上げた。


 は~ 


 かわいすぎる……


 無防備で、弱っているこの感じ。


 抱きしめてやりたくてしょうがねぇ。



 ダメ!ダメ!


 俺は悪魔になるためにここに来たんだから。


 まずは、六花の話を聞いてやる。


 そして悪魔モードで、
 六花につっかかっる。


 そうすれば六花は、俺に怒りをぶつけて、
 悲しんでいたことなんか忘れるんだ。


 俺は子供の頃から、
 そうやって六花の苦しみに寄り添ってきた。


 俺は、うつむいて自分のおでこをさすると、
 六花を睨みつけた。


「お前さ、
 俺を無視するとかありえねえんだけど」


「勝手に私の部屋に入ってくる、
 お兄ちゃんの方が悪いじゃん」


「俺、入るからなって言ったよな」


「良いよって言ってないもん。私」


 俺と目を合わせないようにうつむきながら、
 唇を尖らせている六花。


 それでいい。


 俺にもっと、ムカつけばいい。


「つうかさ、泣くならこっそり泣けよ。

 お前の泣き声がうるさくて、
 勉強に集中できないじゃん」


「ご……ごめん」


 おい! 

 そこは謝んなよ!

 俺に怒って来いよ!

 俺が悪魔でいられなくなるじゃん!!


「で、何があったんだよ」


 俺が悪魔モード弱で接したのが良かったのか、
 六花は素直に話し出した。