今日は紫音くんの
 バスケの練習試合の日。


 桃ちゃんと一緒に、
 試合を見るって約束をした日。


 紫音くんに『応援に行く』って約束したし、
 行かなきゃいけないのはわかっている。


 でも、桃ちゃんはきっと、
 来てはくれないよね。


 あんなひどいことを言っちゃった
 私との約束なんて、
 守らないに決まっているよね。


 私は出かける支度が終わると、
 学校になんか行きたくないと
 訴えている足に鞭を打って、
 なんとか学校にたどり着いた。


 体育館についたら、
 バスケ部目当ての女子たちの多さに圧倒。


 2階の観客席は、
 最前列がほとんど陣取られ、
 ただの練習試合なのに、『頑張って~』と
 黄色い声援が飛び交っている。


 私は、観客席の前から4列目の、
 一番隅に座った。


 やっぱり桃ちゃん……

 来てないね……

 
 わかっていたことなのに、
 『桃ちゃんが私のことなんて嫌い』っていう
 事実を突きつけられた気がして、
 涙が出そうになる。


 泣いちゃダメ!


 今日は、紫音くんの応援に来たんだから。


 私がぎゅーっとスカートを握りしめていると、
 下のコートにいる紫音くんが、
 手を振ってくれた。


 笑わなきゃ!


 今だけでいいから
 笑って手を振り返さなきゃ!


 今から試合に出る紫音に、
 心配をかけないように。


 そう思うのに……
 私の意志なんて全く無視するかのように、
 瞳に涙がたまっていく。


 あふれ出した涙が、
 スカートの上に雫となって落ち始めたとき、
 私の視界が、紫一色になった。