「やだ~!! 六花、可愛すぎる!!」


 春ちゃんは、1眼レフカメラ持つと、
 カシャカシャ私にレンズを向けて
 シャッターを押しまくっている。


「春ちゃん、恥ずかしいよ。
 写真撮られるの」


「だって、本当にかわいすぎなんだもん。
 六花は。

 雪姉に似て、肌も白いし、
 瞳もうす茶色で綺麗だし。本当に美人さん」


 お母さんに、似ている?

 私、お母さんみたいに美人じゃないよ!


 でも、春ちゃんの言葉が嬉しくて、
 胸がキュンとなった。


「六花の写真、
 欲しいなって思っていたんだよね。

 私もうすぐ、北海道に行くから」


「え?」


 予想外の言葉に、
 時間が止まったかのように
 体が動かなくなった。


「春ちゃん、旅行に行くの?」


 春ちゃんの表情を見れば、
 旅行に行くんじゃないことくらい
 はっきりわかる。


 でも、信じたくなかった。


 ずっと私の近くにいて、
 辛いときは思う存分
 甘えさせてもらってきた春ちゃんが、
 遠くに行ってしまうなんて。


 私にとっては、
 亡くなったお母さんがわりだったから。


「六花、私ね、北海道で友達と
 カフェを開こうと思っているの」


「やだよ~ 
 北海道に行っちゃったら、会えないじゃん。

 春ちゃんには、近くにいて欲しいの」


 私がこんなことを言える
 立場じゃないってことくらいわかっている。


 でも、本当に思っちゃうんだもん。


 春ちゃんと別れたくないって。


 あ……

 こうすればいいんだ……


 そうすればお兄ちゃんだって、
 大嫌いな私からやっと離れられる。


「春ちゃん、
 私も一緒に連れて行ってくれないかな? 
 北海道に」

 春ちゃんは目をパチパチさせながら、
 私を見つめた。