ピンポーン


「六花~ よく来たね~」


 夕方になり、
 春香おばさんのアパートに着いた。


 私を見るなり、
 ムササビのように抱き着いてきた春ちゃん。


 ここにもいた。


 目をウルウルさせて、
 私に抱きつくムササビが。


 春ちゃんは40歳くらいで、
 私のお母さんの妹。


 お母さんが亡くなってから、
 何か困ったり、辛いことがあった時には、
 私が連絡しなくてもなぜか駆けつけてくれて、
 私を溺愛してくれる。


「一颯にお願いされちゃったよ。
 六花を可愛くしてやってって」


 お兄ちゃん、
 そんな風に春ちゃんに頼んだんだ。


 優しいとこあるじゃんって思いたいのに、
 思えないから!


 赤城家の呪いなんて嘘で、
 私を長年にわたりだまし続けた恨みは、
 そう簡単には消えないんだからね!!


 春ちゃんは私を椅子に座らせると、
 なれた手つきで髪を結い、
 メイクをしてくれた。


 さすが、
 デパートの化粧品売り場で
 働いていたことがある春ちゃん。


 アイラインをきりっと入れて、
 つけまつげをバサッとつけてくれて、
 口元にはチェリーピンクのグロス、
 大人カワイイメイクを施してくれた。


 髪は、左右をゆるく編み込むと、
 うなじより少し高い位置でまとめてくれた。


 そして、桃ちゃんがくれた天の川の浴衣も、
 着つけてくれた。