夏生さんがスタジオを出ていくと、張りつめていた糸が切れたかのように暖かい空気が流れる。



「とりあえず一通り審査してみようか。それぞれの審査は僕らの得意分野でいいかな?」

「千歳さんがそういうのであれば。」



先ほどの<ruby>刺々<rt>とげとげ</rt></ruby>しい様子とはうってかわって従順な態度になる東くん。



·····え、何その違い!?



「ちーくんの前だと大人しいんだから·····。」



その言葉を聞くと、東くんは鋭い目で誠くんを睨みつける。



対して睨まれた誠くんは石のように固まっている。



不憫だね誠くん·····



「じゃあ5人で分担しようか。」

「沙那ちゃん、いい〜?」

「お好きにどうぞ··········」



そしていつの間にか一通りの審査を受けることになってしまった私。



··········得意なこと一つでも見つけておけばよかった。



「おいクソガキ!さりげなく俺ハブいてんじゃねぇよ!!」

「僕達の先輩なんですから、千尋さんはゆっくり休んでいてください。」



そういうと千歳くんはニコッと天使のような笑みをお兄ちゃんに向けた。



お、お兄ちゃん場所変わって·····!!



「こんの野郎·····すかした顔しやがって!」

「じゃあ決まりね〜!」



無邪気に喜ぶ伊織くんはまるで小動物みたいでかわいい。



そんな自分の甘い考えを後悔することになるとは、少しも思ってもいなかった私なのであった。