ガラガラ─────



その瞬間、扉が大きな音を立てて開く。



「おい千歳ー、女の様子はどうだ?」



その扉の前には、二人分の飲み物を小脇に抱えた愁平くんの姿。



そしてすぐに聞こえた、ペットボトルが床に転がり落ちる音。



「シュウ······」



予想外の乱入者に、千歳くんは少し気まずそうに私に目配せをする。



······いや、私にはどうすることもできませんって!



「千歳お前······」



フリーズ状態だった愁平くんがようやく言葉を発したかと思うと、その顔がみるみる赤く染まっていく。



「······っお前事務所でなんつーことしてんだよ!変態!むっつり!スケベ!」



吐き捨てるように言うと、乱暴に扉を閉める音だけが部屋にこだました。



愁平くーん、ペットボトル忘れてるよー······



そして辺りを包む気まずすぎる空気。



「·······ごめん。僕のせいで。」

「いえ、こちらこそすみません······」



なんで私まで謝ってるんだろう。



······あー、あれだ。バイトでクレーマーのお客さん相手にしてるから。



刷り込まれてるんだきっと。無意識に。



「じゃああとはゆっくり休んで。しばらくしたらなっちゃんから話があると思うから。」

「······なっちゃん?」



すると不思議そうな顔で私を見つめだす千歳くん。



······いや、誰だよなっちゃん!