「あ、沙那ちゃん沙那ちゃん。」



「·····口動かさないで早く準備してください!」



「ちょっと待って!30秒だけ!」



甘えたことを言うな、という意味を込めて怒り全開の顔で尚さんの顔を睨む。



すると“ひっ”っと小さな声が。




「はあ·····何ですか。10秒でどうぞ。」



ビクビク震えている先輩を見ているとなんだか可哀想に思えてきて、少し情けをかけてしまう。



こうやって甘やかすから一向に直らないんだぞ!私!



「ええっと、最近よくバイト終わりにダンスの練習してるみたいだけど·····俺でよかったら教えようか?」



「え·····?」



予想だにしない言葉が聞こえてきて、思わず尚さんの顔をまじまじと見てしまう。



·····あれ、尚さんが珍しく照れてる。



「·····その、いつも俺、沙那ちゃんに迷惑かけちゃってるし。」



恩返ししたいなぁ、なんて照れた笑顔でぼそっと呟く。




·····尚さん、その顔は反則です。