香田さんは男子と私の間に割り込むと男子たちを前にして、


「なんで? 自分で買えばよくない?」


まるであり得ないものを見たように目を見開いて、本気で問いただすに香田さん。


美人の迫力に気圧されて、なぜか私まで一歩下がってしまった。



「えっと、こ、香田さん……!?」


男子たちは可哀そうになるほど、慌てている。


だって、物静かな美人である香田さんが、こんな口調で物を言うなんて、予想だにしなかったから……。


「あんたら女子に頼むとかさすがにダサすぎない?」


片側の頬を持ち上げ、まるで汚いものでも眺めるような目をした香田さんにはもう、今まで教室で見てきたようなイメージは残っていない。


高嶺の花の豹変に、男子は笑顔をはりつけつつも、「え」とか「あ」しか声が出てこないらしい。


この空気をどうしようと思う私が、何ができるわけもなく。



いや、もしどうにかできる私なら、朝比奈くんもびっくりな人気者だったはずだ。