あんないかがわしいことがあっても、驚くほど何もなかった風に出来るんだな。
完璧主義者!?
心臓に悪い思いしたのはまた俺だけか。
どうってことないのな。
普通の日常に戻ってる。




「勉強はかどってる?」




ゲッ……親の前でそんな話題出すなよ。
自分は余裕だからって。
家族全員揃っての夕飯。




「黙ってるってことはヤバいんでしょ?」




何だよ、今日は姉貴面全開だな。
「そうなのか?祐翔」って親父ぃ。
面倒くさいことになってきた。




「俺は理系だから数学なら教えられるぞ?」
ほら、参戦してきた。
「残念でした聡志パパ、数学は私の方が得意だからもう先に教えてまーす!」って仲良くやってろ。




「でも奈那、聡志さん家庭教師のアルバイトしてたことあるんだって」
涼子さんまで………
俺を無視してギャーギャー盛り上がるのだけは勘弁してほしい。
箸を置いてごちそうさま。




「え?もう終わり?全然食べてないじゃん」




「………お腹いっぱい」




色んな意味でな。
さっさと退散させてくれ。
こういう空気、苦手。




「え、熱でもあるの?」って奈那の手が額に触れそうになった。
サッと引いてその手を避けたから更に変な空気になる。
しかも睨んでしまった……かも。




仕方ないだろ。
なに傷ついた顔してんだよ。
ふざけんな。
もう振り回されんの正直ウザい。




「あ……コロッケ嫌いだったかな?」と涼子さんに気を遣わせてしまった。




「お前好きだったよな?コロッケ…」




違う、何なんだよこの展開。
まぁ……ほのぼの夫婦で助かってるとこはあるんだけど。




「あ……嫌いとかじゃないです、明日のお弁当に入れてくれたら嬉しい…です」




「わかった」




パァ…!と明るい顔になった涼子さん。
やっぱ奈那に似てて安心する。
部屋に上がったら案の定奈那が追いかけてきて……ドアの前で腕を引かれる。