「……誘ってみようかな」
なんて柄にもないセリフ。
言ってるそばから鳥肌が立つ。
純太たちに聞かれたら間違いなく冷やかしの餌食だ。
ガタッと立ち上がる奈那。
足元おぼつかないのにこっちまで来て見下ろす瞳。
華奢な手が俺の頬に触れて………
「え……?」
グイッと前に来るから自然とイスは後ろに下がり、足の間に入ってくる。
なに……!?どうしたの……!?!?
背もたれに手をついて左足が乗っかってくるから俺……逃げ場ない。
「ふーん……ヒロも誘うことあるんだ?」
何なの…?その瞳……
さっきまで眠そうだったのに今は……
真っ直ぐ過ぎて逸らせない。
しかも……いつに増して色っぽい。
それは……この格好のせい?
寝不足なせい?
よろけながらこんな大胆に攻めてくるから?
夜ふかししてもクマひとつない……
肌も荒れてない……
ピンク色した唇も潤ってる……
「ひよりちゃんのこと……好き?」
ももの上に乗っかる奈那の足が気になって仕方ない。
ドキドキして……頼む、反応するな俺…!
俯くもんなら頬の手がそうさせてくれない。
再び視線に捕らわれて………
「好き……?」
その言葉だけじゃ自分のことが好きかどうか聞かれてるみたいだ。
長年温めてきた想いが喉からついて出てきそう。
「好きだ」って言えたらどんなに楽か。
俺が好きなのは奈那……お前だけだよ。
「好きだって言ったら…?」
余裕ぶって挑発してみた。
心臓バクバクで悩殺されまくりなのに。
視線が少し外れて髪を撫でられる。
スッと足も下りた。
でもまだ近過ぎて顔の前が胸なんだけど……
顔つきが戻った気がした。
いつもの姉貴面する時の瞳だ。
優しく微笑んだらまた距離を置くの…?

