蒼依奏side



ボクは声が出ない。
この病気は生まれつきだ。
精神がどうとかそういうたぐいでは無い。

そんなボクでも両親は愛してくれるし、クラスメイトもほかの人と変わらず接してくれている、と、思う。

中学に上がってはや1年ボクはまたひとつ大人になる。
桜の吹雪が視界を遮る。

花弁が散っても、木々は桃色だ。

神秘、とても綺麗だと思う。

絶妙に色が違う花弁が重なり合って美しい芸術。

そんな美しいサクラを窓の内側から覗きながら新しい教室へと向かう。

去年までは2階で階段の昇り降りが楽だったが、学年が上がったので3階になった。