「あたしの親友を、パシリみたいに言わないで…」
おそるおそる中に入ると、彼は机に片肘をついて座っていた。
辺りを見渡すと誰もいない。どうやら居るのは蓮だけみたいだ。
「鍵かけろ。誰かが来たら面倒だ」
「…あっ、ご、ごめんなさい…」
「ここ、屋上、各準備室、空き教室。好きな場所選べ」
「そんなに…いいの?」
「ここも含めて、大体のスペアはある。ヨミと菜穂たち以外に話したらぶっ飛ばす」
「……あんたって本当…」
「オレを誰だと思ってんだ」
…心底だるそうに、涼し気な目を携えて話すけれど
その声色と表情には自信しかなくて、今のあたしには限りなく眩しく見えていた。
「…じゃあ、ここでいい…」
「はいよ、帰ったらヨミに渡せ。明日にでも貰う」
「……うん」
「じゃ、ごゆっくり」
あたしには分からない、難しそうな英文の本を読んでいたらしい蓮。
ちらっと見えたノートには几帳面に線が引かれ、英文もびっしりだ。…蓮がいかに努力家かが伝わってくる光景だった。
あたしに鍵を投げ渡すと、彼は荷物をまとめ出ていこうと席を立った。
「ま、っ待って!」