何としてでも泣くまいと

唇を強く噛んだその時、情けない血の味がした。



「笹井先生にはわたしから上手く言っておくね。だからゆっくりしてきて」

「っ、」

「そしたら今日の放課後、一緒に美味しいもの食べに行こう」



菜穂の微笑みに

堪え切れなくなった涙が一筋、頬をつたっていく。


…あたしには、こんなにも素敵な親友がいる。

それだけで十分。分不相応なくらいなの。



「菜穂…っ、」

「うん」

「だいすき。だいすきよ…っ」

「うん!わたしも麗ちゃんがだいすき!」



菜穂がいてくれる。

家族がいて、親友がいて。


あたしはもうすでに、十分すぎるほど幸せ者だ…っ。