◇
溢れるほどの蜜を分け合うひとときは、甘く燃え盛る炎のようだった。
「菜穂、水は?」
「……飲む…」
「ん」
どれくらい抱かれていたのか、それすら定かではなく
虚ろな目をごまかしても無駄だと分かっていたので、蓮くんの部屋の窓から射しこむ陽光に目を細めた。
起き上がって水を口に含むと、軽やかなつめたさが身体を駆け巡っていった。
「…れんくん」
「んー?」
「…すき…」
日差しに溶け込むように彼の名前を呼んでは、一人実感を込めて想いを口にする。
「俺も」
やさしく微笑むその表情が、美しい絵画のようだと思いながら
すぐさま誘いかけるような口付けが降ってくる。
どれだけ愛してもらっても、もっともっとと求めてしまう自分が正直で、抗おうとも思わなかった。
「蓮くん、ぎゅってして」
「…随分と甘えただな?」
「ふふっ。ゆるしてください」
「オレはいつでも大歓迎です」
会えなかった分の想いを
会えたこの日と、未来に乗せる。
甘く押し寄せ続ける感覚に身体をゆだねた。
「「愛してる」」
――…これからも、蓮くんのとなりで。
【旅行のあとの甘い溺愛】完