抱きしめられていた腕が解かれ

蓮くんはわたしの頭を撫でると、指先を頬へと滑らせた。


一度離れた彼の整った顔が、綺麗に微笑んで再び近付いてくる。

重なった唇に包まれ、ついばむように優しく触れては少し離れていくのを繰り返す。


…いつもは、黙って受け入れて、応じるので精いっぱいなんだけど。



「……ん、…」

「っ、」



――…蓮くんが驚いたのが分かった。


近付いては離れていくのを繰り返す

蓮くんの唇に、舌先でもっとと言うかのように触れてみる。


…わたしだって、蓮くんにずっと、触れてほしかった。




「…ふ、…っん…」



わたしの感情を残らず掬い取ってくれた蓮くんは

かぷりと唇の甘噛みを含ませて、優しく甘くキスを落とした。


わたしの声が漏れると、彼は待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな顔をする。

じんわりと疼くような痺れと、熱さを束ねたような絡まる熱に、とろけてしまいそうだった。



「菜穂」

「っ、」

「抱きたい」



…それでもきちんと、答えをゆだねてくれるところが好き。

瞳の奥の情炎が、消えることはないと知っている。



「抱いて…っ」



何もかも、はじまったばかり――…。