夏が終わりを告げ、季節は秋に差し掛かっている。
そろそろ上着を一枚着ないと寒い季節。
…「彼」はそれを最初から分かっていたのか
自分が着ていた黒のカーディガンをわたしに羽織らせて、…後ろから抱きしめて一向に離れようとしない。
「…蓮くん、聞いてる…?」
「聞いてない」
「聞いてるじゃない…」
きしむプレジデントチェア。
…無理もない、ひとつの椅子に二人分の体重が圧し掛かっているのだから。
「菜穂、こっち向いて」
「向けないよ。蓮くんが離してくれないと」
「…膝の上」
「えー…」
「えーとかいつの間に言うようになったのはどの口ですか」
「…ふふっ。はぁい」
生徒会室で、今日もふたり。