(未来のお話です。菜穂と蓮は結婚しています)
――…この広い世界で、あなたと幸せになりたいと思った。
それが形になっている現在を、わたしは未だに夢じゃないかと思う。
「…とど、かない…っ」
神谷菜穂。旧姓、麻見。
高校時代から付き合っていた蓮くんと結婚して、月日が流れて。
今は一緒に住むお家の一室の電球が切れてしまったので、替えようと踏み台に乗って手を伸ばしているのだけど、これがなかなか――…。
「もうちょっと……、」
「菜穂――…、っ何やってんだ!降りろっ」
「ご、ごめん」
「ったく…。何かあったらどうすんだ」
「蓮くんお仕事に集中してたから、申し訳ないと思って…」
「菜穂より大事なことなんてない。いつも言ってんだろうが」
「……はい」
「……。ほんと、勘弁してくれ…。
――…菜穂にも、この子にも何かあったらと思うと気が気じゃない」
…そう。
わたしは今、妊婦なのです。