立ち止まって話す俺たちの後ろから

…すなわち、俺とヨミさんより前を歩いていたその存在。



「良かった…!これ、お家まで届けようと思ってたの。そしたら神谷くんと暦先輩見つけて…。蓮くんも近く歩いてたんだね!」

「いや蓮、俺と奏のすぐ前にはいなかったし結構離れてたよね?おまえどんだけ地獄耳――…」

「…ヨミ?」

「って、奏が心の中で言ってたのを僕は感じ取りました」

「ヨミさんコロス」

「悪かったよ!!この兄弟物騒!!」


「あははっ!!」



蓮と麻見。

…互いが互いを好きなのが、伝わってくる。



「菜穂、送る」

「えっ…いいの?」

「菜穂と一緒にいたいから」

「…うん。ありがとう」



どちらからともなく、当たり前のように手を繋いで

反対方向を歩いて行った2人。



「あっ、待って蓮くん」

「ん?」

「神谷くん!また明日学校でね!!」


(…っ、)



…なぁ、麻見。



「おう!また明日な!」



隣にいるのは俺じゃないけど

もう少しだけ、この想いに浸らせて。


…いつか麻見が驚くような、素敵な恋をするからさ。



「…っし、明日も頑張るか!」



きみの幸せを、俺は今日も願っている――…。



【まだ想いを浸らせて】完