「ふぁ、んん……いく、みさ……っ」

「花乃」


深くなるキスの合間に、乱れた息と共に溢れる想いがこぼれる。


「好きだ」


ストレートな言葉を紡いで、力強く抱きしめたときだった。

急に彼女の身体から力が抜け、一気に腕が重くなる。そして背中からソファに倒れるので、俺は驚いて目を丸くした。

彼女に覆い被さって「花乃!?」と呼びかける。反応はないが、ちゃんと呼吸はしていて顔色も悪くない。むしろ血行はよさそうだ。

これは……寝ているな。すやすやと。


「……嘘だろ」


彼女の両側に手をついたまま、がっくりとうなだれた。

いくら酔っているとはいえ、まさかこの状況で寝るとは。起きたら、キスや告白の記憶は頭から抜けていそうだ。

でも気を失うように眠ってしまったし、もしかしたらキャパを超えたせい……なんてこともあるかもしれない。眼鏡を取ったときの彼女の手は震えていたし、また怖がらせてしまっただろうか。

冷静になってみると、早まった気がして少々後悔する。この子は男慣れしていないのだ。もっと慎重に、丁寧に扱わなければ。


「……禁欲生活はまだ続きそうだな」


指通りのいい髪を撫でて苦笑交じりに呟き、華奢な身体を抱き上げてベッドに運ぶ。

おあずけを食わされた分は、いつか甘い仕置きにして返してやろうと腹黒いことを考えつつ、無防備な寝顔をしばし愛おしく見つめていた。