「眼鏡、取って」


欲情に満ちた熱視線を絡ませ、ねだるように指示すると、花乃さんは戸惑いを露わにして目を泳がせる。


「ど、どうして……」

「邪魔だから」


端的に答えれば、彼女はまだ俺の目的を理解していないようだが、とりあえず指示の通りにテンプルに両手を伸ばしてきた。

恐る恐るはずされ、レンズ越しではなく直接彼女を見つめる。頬を赤らめて困惑している顔も、無垢な色気を感じる。

たまらなくなって、頬に手を添え、唇に優しくキスをした。


「──え……?」


一瞬の出来事に、彼女はなにが起こったかわからない様子で、眼鏡を持ったまま呆然としている。

それを取ってテーブルに置き、今度は後頭部をしっかりと支える。


「勘違いしないで。これは、演技なんかじゃない」


きっぱりと言い切り、さらに唇を重ねた。柔らかなそれは想像以上に甘くて、脳が痺れる。

この子が俺をどう思っているか、本性を知ったときどんな反応をされるか、今はどうでもいい。ただ、俺が本気だということを教えたい。

細い手が弱々しい力で俺の服をきゅっと掴み、苦しそうだが色っぽい声を漏らす。