敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

「これでさらに信頼してもらえそうですね」


今回はほぼ事実を伝えただけだが、こうして外堀を埋めておくことはきっと無駄ではない。偽りの恋人関係を本物にするために。

俺がこんな腹黒いことを考えているとも知らず、森次さんはこちらに身体を向けてぺこりと頭を下げる。


「話を合わせていただいて、ありがとうございました。そ、それで、あの……」


誕生日を祝うというのは本当なのか、そもそもなぜ知っているのか、どれから聞こうか迷って口ごもっているらしい。

やはり控えめな彼女に、ふっと笑いがこぼれる。俺も彼女の隣に腰かけ、花びらに触れるようにそっと髪を撫でて口を開く。


「誕生日、デートしませんか? あなたの喜ぶ顔が見たい」


ストレートに告げると、二重の瞳が大きく見開かれ、頬が薄紅に色づいていく。また拒否されるかもしれないと懸念するも、今日は素直にこくりと頷いてくれた。

それがとても愛らしくて、抱きしめたい衝動を抑えていたことなど、彼女は知る由もない。