敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

「また送ってくれるの? 気遣わなくていいのに、ありがとね。……あっ!」


急に大きな声を上げたので、今度はしっかりと顔を向けた。口元に手を当てる彼女の表情には、危機感らしきものが滲んでいる。


「ちょっと今は、事情があって受け取れなくて……いや、そのー」


挙動不審な動きでしどろもどろになっている彼女の言葉から、なんとなく問題を推測することができた。

おそらく、お母さんは娘になにかを郵送しようとしているのだろう。しかし、本人はアパートにいないため、どうしたらいいか困っている、といったところか。

解決策はすぐに思いつき、俺も席を立ってソファの後ろに回る。そして、森次さんの手からスマホをするりと抜き取った。

驚いてこちらを振り仰ぐ彼女に、意味深に口角を上げてみせ、スマホを耳に当てる。


「もしもし、桐原です」

『えっ!?』


突然俺の声が聞こえてきて驚いたのだろう、お母さんはすっとんきょうな声を発した。


『やだ、ごめんなさい! 一緒にいたの?』

「はい、驚かせてしまって申し訳ありません。実は今、花乃さんは私のマンションで暮らしているんです」

『ええ~っ!!』