しかし、同居生活が一週間過ぎた頃、予期しないことが起こった。

朝、目が覚めて真っ先に視界に入ってきたのは、愛らしい寝顔。しかも、腕枕でもしていたかと思うほどそばに。

横向きになっている俺と向き合うようにして眠っている森次さんは、寝返りを打ってここまで来たらしい。


「……まいったな」


前髪にくしゃっと手を差し込んで、ひとり言をこぼした。

あんなに拒否しておいて自分からくっついてくるとは、無自覚にもほどがある。小悪魔か。この無防備な寝顔も可愛いすぎるだろ。

見つめるだけでは物足りず、彼女の背中に片手を回した。その手で髪を撫でると、「ん……」と色っぽい声が漏れる。

身じろぎした彼女は、俺の鎖骨辺りに額を軽くこすりつけるようにしてさらに密着し、再び幸せそうな寝息を立て始めた。

途端に、胸の奥からなにか温かいものが急激に湧き上がってきて、くすぐったくなる。


──ああ、この感覚……これはもう認めるしかない。俺は完全に堕ちている、と。

この子が愛おしくて仕方ない。自分のものにして、たっぷり可愛がってあげたい。