敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

専務、わざわざ来てくれるの? 確かにまだ安心はできないし、アパートに帰るまで不安だからありがたいけれど、申し訳ない……。

複雑な気分でしばらく待っていると、高級感のある黒いハイブリッドカーが駐車場に停まるのが見えた。

専務の車だとすぐにわかり、彼が運転席から降りてくるのと同時に店を出る。まだあの人がどこかに潜んでいるのでは、という多少の恐怖もあったが、それ以上に彼のそばに行きたかった。


「森次さん!」


こちらに駆け寄る彼は焦燥感を露わにしている。私は安堵から涙腺が緩み、目を潤ませて頭を下げる。


「専務……すみません、ご迷惑をおかけして」


気丈に振る舞いたかったのに、いまだに声が震えた。自分はこんなに弱かったのかと思い知る。

そのとき、背中に手を当てて引き寄せられる。あっという間に力強い腕でしっかりと包み込まれ、私は目を見開いた。


「怖かったでしょう。もう大丈夫ですよ」


優しく頼もしい声が、耳から全身に沁みわたる。子供を宥めるように背中をポンポンとするのも、安心感で満たしてくれる。

心臓の鼓動は今も乱れているのに、さっきのような不快さはまったくなく、ただただ心地いい。

彼のぬくもりにすがっていたくて、私も広い背中に遠慮がちに手を回した。