敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、またお邪魔させていただきます」


そう答えた専務は、普段通りの穏やかな笑みを浮かべている。

少しホッとしながら、先ほどの冷たさは私の勘違いだな、と結論づけた。


打ち合わせを無事終え、私たちは本社へ戻る。その車中、気楽になった私は、行きよりもすらすらと会話が出てくるようになっていた。


「すぐに話がまとまってよかったですね。先輩方が困っているのを見ていたので、どうなるか少し心配だったんですけど」

「ええ。嫌な顔をされることも少なからずありますから」


運転する専務の横顔も、凛々しくて完璧だ。眼鏡男子の横顔も大事なポイントなのである。

できればずっと眺めていたいのを堪え、今日会ったもうひとりの眼鏡男子を思い返す。


「烏丸さんはとても理解があって驚きました。愛想もよくて、思いやりもある。素敵な方ですね」


彼は人たらしのタイプなのかも、と分析して専務の返答を待っていたものの、なにも反応がない。運転席に目をやれば、どこか上の空で無表情の彼がいる。

不思議に思い「専務?」と声をかけると、彼はこちらを一瞥して、ふっと口元を緩めた。